第036号 粉飾した決算書を見抜く簡単な方法

金融機関のペイオフも解禁になり、皆さんも色々と頭を悩ませていらっしゃると思います。企業がとられている対策の主なものは、
①暫定的に普通預金に移行する
②格付けの高い外資系の金融機関にかえる
③郵便振替口座の利用
などですので、参考にしてください。さて、不況のおり企業倒産が相次いでいますが、それに伴い債権回収が滞り資金繰りがひっ迫してきている企業が多いのも事実です。したがってそうなる前に与信管理を徹底させ、手を打たなければならないのですが、手に入れた決算書や財務分析の結果が粉飾されていて、判断を誤ってしまっては意味がありません。そこで今回は「粉飾した決算書を見抜く簡単な方法」と題して、そのポイントを簡単にまとめてみました。これは、過去3~5年の運転資本の増減を(売掛債権+在庫-買掛債務)を売上高と対比させてみるということです。例えば

(1)売上高が前年より増加している場合


この場合は、運転資本も前年より増加するのが普通です。
(売上高の増加率を大きく上回る増加は問題あり)
運転資本が前年よりも減少している場合は、結果的には好ましいのですが、戦略的に努力しての結果かどうかです。売上高が前年より増加して運転資本を減少させる為には、通常次のようなことを意識的に実践しなければなりません。
①売掛債権回収のサイトを短くする
②回収条件が知らないうちに伸びてきている企業の回収を当初の条件に戻す
③回収サイトの短い得意先の売上高構成比を上げる販売戦略をたて、実践する
④ネット販売等在庫を持たない経営に切り替える
⑤締め日を上手く使って買掛の支払を分散させる
以上のような企業努力が何もされず、運転資本が減少している場合は、売上の前倒し等粉飾されているケースが考えられます。また、買掛債務がバランス悪くやたら多くなっている場合は運転資金が苦しく、仕入先の支払まで滞留させていることが考えられます。

(2)売上高が前年より減少している場合


この場合、運転資本も前年より減少するのが普通です。
(売上高の減少率を大きく下回る減少は(1)の対策が実施できているかを確認します)
運転資本が前年より増加している場合は次のようなことが考えられます
①サイトの長い手形取引が多くなってきた
②回収できない不良債権が多くなってきている
③陳腐化・不良化した在庫が販売不振により増加傾向にある
④仕入先から督促され、支払が早くなってきている
以上のようなことがないとすると、例えば損益計算書で利益を出すために在庫を水増し計上していることがわかります。このように、売上高と運転資本は密接な関係があるために、粉飾を見抜くための手がかりになることが多いのです。また、運転資本は売掛債権回転率(回転期間)や棚卸資産回転率(回転期間)、買掛債務回転率(回転期間)などの回転率や回転期間を使っても分析できます。

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