第098号 「アイデンティティの確立とその成り立ち」第四回
さて、前回は父親の子供との関わりが、子供の自我の発達、人間的成長にどのような影響を与えていくのかについて考察いたしました。また、父親不在の家庭環境による弊害についてもふれさせて頂きました。幼少期の家庭環境は「温床」として、特に人格の基礎を形成していく段階で重要な意味を持ちます。
人生を如何に生きるかは私たちにとって大きなテーマです。
正直に自分らしい表現をしながら毎日を送ることができればどれだけ幸せなことでしょう。 幼少期の私たちは親がいなければ何もできない「絶対依存」の立場です。
何事も「ああして・こうして・」の願い事が当たり前の世界です。「与えてもらうことで自己の存在価値を確認していく」時期とも言えます。特に両親からの親密な愛情が欠かせません。自己の生命を守ろうとする本能「生存欲求」が強く働き、心理的にも生理的にも「安心感・満足感」を強化していこうとします。「主体性・自発性」の発揮度を高めていく重要な意味を持つ時期といえます。
自発性の獲得は「自分の生活や人生を、自分で選択する能力」に影響を与え、二次的な関係欲求(人・集団・物事とのふれあい度を決定づける自我構造と能力)の獲得に影響を与えます。
更に、この逞しさとも言える能力の獲得に重要な影響を与える体験が、学童期における「ギャング・エイジ」と言われる一連の行動です。小学生の頃になると大勢の仲間とのふれあいを持つようになります。親しい友達と集団で遊ぶことを、楽しみや生き甲斐に感じるようになります。
これは、親や教師、大人の干渉や強制や保護から逃れる方法でもあり、親離れの始まりと言えるでしょう。この頃の活発な遊びの中で、物事に対する好奇心を強化していくと言っても過言ではありません。
小学6年生頃まで続きますが、その効用は「社会的な日常のルール(遊びの中にもルールがあります)」や、人との関わり方、責任を果たす意志、協力し合うことの大切さなど、自然に身につけていきます。また、思うようにならない「悲しみや怒り」の体験を通して、忍耐心や人を思いやる心を身に付けていきます。
自我の確立まであと一息、自己のかけがえのなさ(尊厳)を形成する、とても大切な体験の時期ということができます。
しかし、現代社会の営みは環境の変化に伴い、外で遊ぶ機会も限定され、近隣の親同士の関わりも年々希薄になっていると言われます。
遊び仲間の減少に加え、テレビゲーム・携帯電話など物に頼る生活が増え、集団で一つの目標に向かい、達成感を共有する人情味ある体験が少なくなってきました。純真な探求心や好奇心が損なわれ、後々の社会環境における協働作業能力を後退させる原因にもなります。
良い人間関係づくりが阻害される現状にあることは否めず、自信に満ちた豊かなアイデンティティの確立が憂慮される現状にあるようです。
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