第106号 「アイデンティティーの成り立ち」第6回

さて、長い年月をかけてつくられていく「自己認識」ですが、その自分の個性を皆さん詳しく説明できるでしょうか。部分的に「こんなときにはこのような傾向があります」という説明はできても、それはどんな心理状態なのか、自分や、他人や周りの環境に、どのような「関わり」や「影響」を与えているのかについてはあまり考えません。ましてや日常の家庭、職場など、社会生活の中での対人関係において、「周りから与えられる影響」が自分の人生や考え方に、どのように反映しているのかとなると皆目見当がつかないという方も多いでしょう。要するに、自分を生きていながら、知らない自分を持っているという事実があります。
私たちは外界からくるすべての刺激に「特有の反応」を起こします。それがその人のものの見方、考え方、行動、態度、感情の表現、言葉、対人関係、仕事の仕方、生き方など、一連の取り組み姿勢となります。交流分析では、それらを科学的な手法によって解析していくのです。
交流分析では、エゴグラム(性格分析表)を活用しながら、一人一人の個性にどのような心理的エネルギーの配分があるのかを見ていきますが、それを「自我状態」と呼んでいます。交流分析の創始者であるエリック・バーン博士は自我状態を大きく3つに分けています。
◆一つ目は、その人の感情表現の傾向です。
人間は基本的に、人や環境からの刺激が不快であれば受け入れるのを嫌がります。しかし、乳児期・幼児期は両親に絶対的依存の状態です。喜び・悲しみ・怒り・恐れが生じても受け入れざるを得ません。この感情が心の構造や機能として、どのように表現されているのかを診断します。これを「子供の自我状態」と言います。
◆二つ目は、その人の良心や行動表現として働く機能です。
人に対して笑顔で優しく接する人、厳しい態度や言葉で接する人がいます。仕事や物事に対して積極的な人、消極的な人もいます。これらは特に幼少期の両親との関わりの中での躾・教育によって身に付けていくもので「親の自我状態」と言います。
◆三つ目は、その人の思考表現の傾向です。
落ち着いて真剣に考える人がいます。あまり考えずに直観的に、性急に答えを出す人がいます。これらも幼少期の両親との日常生活や関わり方、躾や教育される中で影響を受けて育つ自我ですが、その時々においてどのように聞きとり、解釈し、判断し、意思決定していくプロセスを身につけたか、それは成人した現在の「今ココ」における思考習慣となっているのです。これを「成人の自我状態」と言います。
そしてこれらの3つの自我状態は、更に6つの自我状態に分かれます。それらは記号で表現されますが、次回にお伝えいたします。

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