第115号 総資本経常利益率を重要視しよう

自社の経営状態を知るために重要度の高い指標として、総資本経常利益率があります。損益計算書の売上高や経常利益だけを見て、増収増益であるとか、減収減益などとよく言われますが、これでは経営の問題点はほとんど掴むことはできません。また、貸借対照表がまったく無視されていますので、資産の運用状態も知ることができません。この両面を掴むことができるのが総資本経常利益率です。 総資本経常利益率は次のように算定します。
総資本経常利益率=経常利益÷総資本(総資産)×100
金融機関の格付けでみると、6%以上で満点評価を得られます。そして、この指標が低かったり、マイナス(赤字)であったりする企業は、この総資本経常利益率を次のように分解し、その要因を損益構造と資産の運用状況の両面で把握をしなければなりません。
「損益構造の課題」
売上高経常利益率=経常利益÷売上高×100
「資産の運用状況」
総資本回転率=売上高÷総資本(総資産)
売上高経常利益率は金融機関の格付けでは、4%以上を求められています。こちらはさらに売上高営業利益率や売上高総利益率を算定し、どの利益の段階で問題が生じているかを掴み、次のように掘り下げをしていきます。
売上高総利益率→売上原価率の上昇→仕入先の選定、値引き交渉、売上値引き抑制のための新商品開発、廃棄ロスの低減
売上高営業利益率→販売費及び一般管理費率の上昇→生産性アップによる人件費率の低減、プロフィットコストの有効活用、ロスコストの徹底削減
売上高経常利益率→借入金利の負担軽減、空いているスペースの有効活用による営業外収益の確保
一方の総資本回転率は金融機関の格付けから推定すると、1.5回転以上が目安です。今度は貸借対照表に視点を置き、分母に資産である売掛債権(受取手形や売掛金)、棚卸資産、そして固定資産を代入し、それぞれ売掛債権回転率(販売から回収までの期間が伸びていないか)、棚卸資産回転率(仕入から販売までの期間が伸び陳腐化していないか)、固定資産回転率(固定資産を遊休資産にせず上手く活用できているか)に落とし込み、どの資産の運用状況に課題があるのかを掴みます。このように収益性を見る上でも、貸借対照表に意識を向け、手を打っていくことを忘れないようにしましょう。

お問い合わせ

ご相談はお気軽にご連絡ください。 メールは24時間365日受付しております。