第117号 「太陽の塔」に見るバランスと違和感

皆様、お元気ですか。今回は、1970年に行われた大阪万博の「太陽の塔」についての逸話を含めて、「経営とは、何か。」を考えたいと思います。
「経営とは、バランスである」とよく言われますが、これは至言ですね。しかし、戦略的にはどうでしょうか。バランスが取れている戦略とは、一見よさそうですが、私にはインパクトがないように感じられます。皆様は、どうお感じになられるでしょうか。そのバランスと違和感のマッチングしたものこそが「太陽の塔」のように、私には感じられるのです。あの一見、化け物のようなシンボルタワーが40年の時を重ねてもいまだに新鮮であり、インパクトを与えてくれるのはなぜでしょうか。その作者こそ、岡本太郎です。
「太陽の塔」高さ70メートルの逸話
岡本太郎が万博会場のメインプロデューサーの依頼を受けたときに、メイン会場の高さは30メートルでしたが、その天井を打ち破って70メートルのシンボルタワー(ベラボーなもの)を考えたこの発想こそが、違和感の代表みたいなものです。その時の岡本太郎の心境を表しているのが、次の文章です。
「壮大な水平構想の模型を見ていると、どうしてもこいつをボカン!と打ち破りたい衝動がむらむらと湧き起こる。優雅におさまっている大屋根の平面に、ベラボーなものを対決させる。屋根が30Mなら、それを突き破って、のびる。70Mの塔のイメージが、瞬間に心にひらめいた。」 (岡本太郎著『万国博に賭けたもの』)
就任要請に珍しく戸惑っていた太郎が、万博のテーマ館のプロデューサーを引き受ける決心をした瞬間です。ベラボーなものとは「太陽の塔」です。もちろん建築家たちは、うれしい顔をしませんでした。
「徹底的な対決こそ、本当の強力なのだ。同調、妥協は何も生み出さないし、不潔である。」
持論でした。
「日本人一般のただふたつの価値基準である西欧的近代主義とその裏返しの伝統主義、それの両方を蹴飛ばし、太陽の塔を中心にベラボーなスペースを実現した。集まって来た人が、「なんだこれは、」と驚き、あきれながら、ついつい、うれしくなって、にっこりしてしまうようでありたい」
「太陽の塔」は6500万人の入場者の目に触れました。
「芸術は、爆発だ」
「爆発というと、みんな、ドカーンと音がして、物が飛び散ったり、暴力的なテロを考える。僕の爆発は、そういうんじゃないだ。音もなく、宇宙に向かって、精神が、いのちがぱあっとひらく。無条件に、それが、爆発だ」
皆様、いかがでしょうか。バランスと違和感との融合こそ、今、求められているのではないでしょうか。一度、深く考えてみてください。

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