第129号 お金でモチベーションは上がらない!?~続編~

前回(第123号)のワンポイントアドバイスでは、ハリー・ハーロウ氏とエドワード・デシ氏の実験結果をもとに、お金(金銭的報酬)がモチベーションに与えるマイナスの影響について述べました。正確に言うと、金銭的報酬は「内発的動機づけ(=仕事そのものへのやる気)」を低下させ、仕事を苦役に変えてしまうのです。
しかし、金銭的報酬がまったく効果がないということではありません。人間が社会のなかで生きてゆくにはお金が必要不可欠ですし、お金によってモチベーションが上がる場合も存在します。
まずは、生計が立たなければ、お金に関係なく仕事そのものに没頭することなど出来ません。給与が生計を営むのに十分なラインを超えていることが絶対条件です。あるいは、収入の変動が激しかったりすると、将来の収入に対する不安感が増大します。生活をするのに十分な報酬を安定的に得ていて初めて、内発的動機づけが有効となるのです。
次に、担当している業務がルーチンワークの場合は、金銭的報酬が効果をあげます。仕事が単純な作業の繰り返しだけだと、人間というのはどうしても飽きてくるのです。これはその人が悪いのではありません。人間とは、そのような生き物なのです。創造性や自発性を発揮する余地がまったくないルーチンワークに従事するような場合は、金銭的報酬によって生産性を上げることが可能です。これは諸々の実験によっても証明されています。
このように、金銭的報酬が効果を発揮する場面もありますが、現在の日本社会を見たときに、「仕事をしていて生計が立たない」あるいは「まったく創造性や自発性を必要としない仕事に従事している」ということがあるでしょうか?控えめに言っても、そういう場面は少ないと思います。経営者さまも、自社のすべての社員さまに「創造性」や「自発性」を発揮した仕事をして欲しいとお考えではないでしょうか?また、日本経済全体のことを考えても、コスト競争力がない状況のなかで、「創造性」や「自発性」を発揮した仕事の仕方がますます求められていくことでしょう。このような社会からの要求は、正規社員・非正規社員という雇用形態を問わず、当てはまることです。
つまり、これからの日本社会は、ますます金銭的報酬の効果がなくなっていく流れにあるのです。
ここまで書くと、皆さまは「お金でモチベーションが上がらなければ、どうやってあげるのか?」と疑問をお持ちになられるかと思います。その疑問に応えるカギとなる考え方に「フロー理論」という理論があります。次回の私の担当するワンポイントアドバイスでは、「フロー理論」についてご紹介したいと思います。

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