第140号 与信管理の進め方について

「キャッシュフローセミナー」などでも必ずお話をさせて頂いておりますが、「与信管理」とは、あらかじめ取引先の信用調査を行い債権の貸倒れを防止することをいいます。取引先が倒産してから慌てても後の祭りです。資金繰りが苦しい今だからこそ、信用調査をしっかりと実施し、不良債権を抱え込まないことが大切です。
取引先を調査する方法としては、外部調査と呼ばれるものと内部調査の2通りがあります。外部調査は、興信所などの機関を利用して取引先を調べることです。これらの機関は3万円前後の比較的格安な費用で依頼できることや、手間暇がかからないなどのメリットがある反面、時にはなおざりな調査で期待していたほどの情報が得られなかったということもあります。これらの機関を利用される場合には、できるだけ企業調査がメインで得意分野としているところを選択し、担当者を決め、個別の付き合いをするなど継続的に利用する工夫が必要です。
さて次に内部調査ですが、これは文字どおり企業内部で積極的に調査を進める方法です。内部調査は通常、定量面と定性面とに分け調査します。
定量要因とは財務数値をもとに分析、格付けすることです。そのためには当然のことながら取引先の決算書を入手することが必要になります。「商法」は債権者保護のために決算書を作成することを義務づけています。裏を返せば、得意先の決算書を見る権利があるわけで、皆さんも不安がある得意先へ出向かれた際は提示を求めてみることも必要です。私のクライアントなどは決算書の提出を求め応じない企業との取引は行わない所もあります。また、すべての数字がわからなくても、自己資本比率と総資本経常利益率ぐらいをつかむことができれば、およそその企業の財務体質はわかるものです。ちなみに自己資本比率が10%以下で総資本経常利益率がマイナスの企業であれば取引を控えるか、現金取引のみにするなどの配慮が必要です。
次に定性要因ですが、これは数字以外の調査です。これには目で見るポイントと耳で聞くポイントがあります。目で見るポイントには、
(1)店舗の立地条件が目で見て適当か
(2)商品の品揃えはどうか
(3)店員は何人いるか(売上高予測にも役立ちます)
(4)店員の応対ぶりはどうか
(5)倉庫の荷積みはどうか
などです。一方耳で聞くポイントには、
(1)取引先の担当者(セールスマン、経理マン、出荷係など)
(2)下請会社から受注状況や支払状況など
(3)販売先から販売状況を
(4)同業者から噂を
(5)仕入先から仕入の状況や支払状況、手形サイトなど
(6)元従業員、旧役員から
などがあります。ですから、営業マンもただ商品を売り込みにいくだけではなく、このような内容を注意深く観察してくることが大切になります。定性要因の場合は、調査する人の主観が入るため、できれば一人だけが評価するのではなく複数人で実施し突き合わせすることをお勧めします。これら定量、定性の評価項目が設定できれば、それらを計数化し最終合計点数の高低で信用度をランク付けし、取引内容を決定していきます。例えば、Aランクに該当すれば積極的に販売し、Dランク以下は取引を自重する、又は現金取引なら応じるなどの設定です。(なお、通常は定量要因と定性要因のウエイト付けもします。例えば、定量が6割で定性が4割という具合です。)
最後になりましたが、利益を獲得するためには確かに売上を伸ばさなければならないのですが、資金構造の悪い会社は運転資金がかさみさらに資金繰りが悪化することをご理解いただき、売掛債権の早期回収と不良債権防止のための与信管理をぜひ推進していただきたいと思います。

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