第141号 中長期的なモチベーションを上げるには?

前回第134号では、数か月というスパンでの短期的なモチベーションの上げ方について扱いました。今回は、数年単位の中長期的なモチベーションを上げるための方法について扱ってまいります。
私は人事制度のコンサルティングをさせていただく時には、制度構築の前に社員さまにヒアリングをさせていただきます。そこで、社員さまが仕事に生きがいを持つために必要な人事制度の方向性を検討するのですが、ヒアリングの中で特に感じることは「将来への不安が仕事のモチベーションを低下させている」ということです。
「この会社で頑張っても自分の将来は良くなるのだろうか?」「自分はずっとこのままの状態が続くのだろうか?」などの将来に対する漠然とした不安が強く、それが「今、頑張る」という気にならない要因になっていることが多々見受けられます。社会全体が混迷の度を深めていますので、その不安はますます強くなっていくでしょう。理屈で考えると、将来が不安だからこそ「今、頑張る」必要があるのですが、人間はそのように理屈だけで片付けられるものではありません。人間のパフォーマンスには、感情が大きく作用するからです。
将来への不安をプラスのエネルギーに変えていくには、なりたい自分・あるべき自分を描き、その道筋を明確にする必要があります。これが「キャリア開発制度」です。一般的に、人事制度の中心には等級制度や評価制度が置かれますが、私はこの「キャリア開発制度」を最も重要なサブシステムだと考えています。なぜなら、社員さまが豊かな人生を設計するサポートもでき、かつ、会社としても社員さまが自主的に成長する促進剤の役割を果たすからです。
キャリア開発制度というと、大企業の事例などを見ると大変複雑で、中小企業では構築できないような印象を受けてしまいますが、中小企業には中小企業に合ったキャリア開発制度があります。基本的な構築プロセスは至ってシンプルです
1.キャリア・パスを明確にする:どんな役割(多くの場合は役職)があるのか?
2.必要なスキルを明確にする:それぞれの役割に必要なスキルは何か?
3.必要なスキルの獲得をサポートする方法(OJTとOFF-JTの組み合わせ)を明確にする
社員さまの中長期的なモチベーションを上げるためにはキャリア開発制度は非常に有効ですが、どんな社員さまのモチベーションでも上げられるという特効薬ではありません。まず大前提に、社員さまに「自分の人生は自分自身で築いていく」という意識が必要になります。これがなければ、せっかくキャリア開発制度を構築したところで、まったく活用されずに終わっていくでしょう。
ですので、制度をつくっただけではなく、定期的な上司との面談によって、社員さまが自分でキャリアを設計することもサポートしていかなければなりません。何事も地道な努力の積み重ねしかないのです。

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