第155号 第八回「社会的知性の高いリーダーを目指そう」

●「核家族化と心理状態の変化」について その1


「環境が人をつくり、人が環境を変える」という言葉があります。明治、大正、昭和、そして平成の今日まで「社会も人の価値観も随分変わってきた」と感じますが、読者の皆様はどのように感じておられるでしょうか。
その昔、私が生まれたのは太平洋戦争末期の昭和18年。長崎県のある小さな島で、今考えてみると「外からの出入りが少ない」閉鎖的な環境(村)であったように思います。半面、家族は祖父母・両親・子ども・孫・親類縁者などが関わり合う、いわゆる「大家族」が多くあり、伝統的なお祭りや村の行事などは「向こう三軒両隣」で協力し合い、助けあって生きる賑やかな一面があったように思います。少ない人口の中ですが規範性が強く求められ、周りに迷惑をかけるようなことがあれば、親にはもちろん近所の人にも叱られることが多々ありました。
交通の便が悪く、道路は舗装されておらず、着るものも食べるものも少ない質素な生活が当然の時代でしたから、助け合わなければ生きられない環境だったのかもしれません。その頃の大家族のメリットを考えてみると、仕事・家事・育児・掃除・洗濯などが自然に分担され、子どもも親の手伝いが当たり前に行われ、家族の絆が強かったように思います。反面、デメリットを考えてみると、親の近所への体裁を重んじる価値観から、家族(特に子ども)への押し付け・指示・命令が強く、束縛されることの多い環境で窮屈に感じることもあり、我慢や忍耐が当然求められる時代であったようにも思います。
さて、核家族という言葉の表現がなされるようになったのは、1949年アメリカの文化人類学者ジョージ・マードックの「社会構造論」という著書が出てからのようです。夫婦と未婚の子ども、もしくは夫婦のみの家族を指し、社会の基礎単位として一般的に構成され、存在する家族の意味です。しかし日本では1920年(大正時代)には過半数が核家族であったようで、1960年代に入ると急上昇したようです。
核家族のメリットは、マンション・アパート・団地など住居が狭くて済む、近所付き合いにおいて柔軟な関係が持て程良く融通がきく、他の家族との生活の違いや家族の秘密などに干渉されることが少なくプライバシーが維持しやすい、などが挙げられます。また都市化が進み、人口の偏りや職場の変化による転勤者の増加、共働きの増加、少子化、親の高齢化など、豊かと言われる中で多忙な一面が増え、心理的に個人への負荷がかかるなど、昔では考えられなかったデメリットも出てきました。
次号に続きます。
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