第160号 第九回「社会的知性の高いリーダーを目指そう

●「核家族化と心理状態の変化」について その2


さて、前回は核家族のメリットについてお伝えいたしました。
現代は近所付き合いではあまり体裁を繕うこともなく、程良く関わっていれば何とかやっていける、煩わしさを感じないですむ環境ではあります。しかし、長い間の基本的なふれあいの希薄さが続く中での新たなデメリット、つまり問題が出てきました。
以前は集団で話し合い助けあう生活が当然のように思われてきた農村でも、若い方々が都会に流出し現在では後継ぎも少なく、高齢者の夫婦や一人だけの住まいが増えてきました。これまであったマーケットや商店が無くなり、小さな車で物品が配達されるのを待つ生活。話し相手といえばロボット、そんなニュースも時折放送されます。青年層が少なくなった農地は耕す人もなく、いわゆる「里山」に猿、熊、鹿などの動物が出没して、田畑が荒らされ施しようのない有様に変わりつつあります。コミュニティ(村落共同体)も、利害を共有してきた経済やお祭りなどの伝統文化もその姿を失いつつあり、地域で人生を分かち合う「ささやかな」人間関係が途切れつつあるという現実、笑顔も少なく自然な欲求さえも断たれつつある「覇気のない日常」が増えてきたことを憂えるのは私だけでしょうか。
一方で、豊かさへのあこがれを持って都会で暮らすようになった方々の、コミュニティの歪みが指摘されています。毎日を自宅と会社の往復に流されて、夢見ていた片方の結婚生活もできないままに時を見過ごしてしまう。新たな家族もつくらない(つくれない?)で独身生活をする方が増えました。益々少子高齢化が進む原因でもあります。
さて少し視点を変えてみましょう。現在は物質的一面から考えれば、最高に恵まれた便利で豊かな社会であり、そういう意味では幸せな人生がつくられる機会が多いと言えます。しかし基本的な「生存欲求」を「心理的一面」から考えてみると必ずしもそうではないことが見えてきます。つまり、「生理的」には満たされていても、人間が本来求めている「ふれあい」「関係欲求」が希薄になりつつあるからです。
アメリカの心理学者アブラハム・マズロー博士の「欲求5段階説」理論があり「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物」と仮定しています。また、アルダーファー博士の「ERG理論」では「3段階欲求説」があり「関係欲求」が満たされない時、その上位概念である「成長欲求」が満たされず、「貢献欲求」としての生産的な人生に意識が向きにくいことが提示されています。やはり良い人間関係を通して「共感性」に満ちた「目的の共有」がなければ「目標の共有」ができず、生きることの意味さえ感じることが出来なくなり「感情」がストレスとなって「社会的知性が阻害されてしまう」のです。
人間は集団で認め合い、支え合って生きる生き物です。日々起こる自殺や殺人などの事件は、「ふれあい」そのものが希薄になってしまった現在への警告のような気がします。
次回に続きます。

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