第175号 女性活躍には、制度だけではなく意識変革が必要不可欠

■女性活躍を推進する法整備が進んでいる


企業に女性の登用を促す女性活躍推進法が成立し、2016年4月から女性の採用や管理職登用などの数値目標の設定と公表が企業に義務づけられます(ただし、300人以下の中小企業は「努力義務」となっています)。
これは安倍晋三首相の成長戦略の核となっていて、政府は指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%にする目標を掲げています。この政策の背景には、民間企業の課長級以上の管理職に占める女性割合において、4割を超す米国や3~4割の欧州各国と比べて、日本は2013年時点で11%と低い水準となっている現状があります。
また、雇用に関する大きなトレンドとして、ダイバーシティ(多様性)の推進が叫ばれていますので、女性活躍もこの一環となります。多様な価値観や働き方を促進できるような法環境の整備がされることは、大変喜ばしいことだと思います。

■制度だけでは女性活躍は推進できない


しかし、法整備が進めば女性が今まで以上に活躍する社会になるかというと、私は疑問に感じています。
HR総研が人事担当者向けに「女性登用や活躍推進を進める上での課題」を調査したところ、最も多かった回答は「女性社員の就労観」の42%であり、次に「ロールモデルの欠如」(39%)、「風土・社風」(38%)となりました。この調査の結果を文字通りに解釈すると、法環境が整備されたとしても、当の女性社員自身の意識が変わらない限り、女性がさらに活躍する社会には至らないということになります。
このことは、私の経験でも思い当たることがあります。お客様の会社で、「もっと女性が活躍できる会社になってほしい」という声が女性社員さんから挙がってきたので、「では女性が活躍できる会社になるための施策を一緒に考えましょう」とプロジェクトメンバーを募ると、当の女性社員さんの手が挙がらないということがありました。
また一方で、環境が整っていなかったり、ロールモデルがなかったとしても、活躍している女性がたくさんいらっしゃいます。それは、自分の力でキャリアを切り拓いてきたということです。
また、意識を変える必要があるのは、女性だけではありません。男性も変わる必要があります。女性の役割を補助業務に限定したり、出産・育児という女性が中心となるライフイベントへの理解がなかったりすれば、せっかく意欲と実力のある女性社員がいらっしゃっても、その活躍を阻害することになります。
これらのことから、私は法令や制度などの環境を整備することも当然に大切ですが、女性・男性ともに意識を変えることが重要課題になると考えています。

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