第179号 第十二回「社会的知性」の高いリーダーを目指そう

●「核家族化と心理状態の変化について」その5


核家族化の進行は、多様な「人間関係の情報交換の機会」が少なくなっていく現象を作り出すことは否めません。幼少期より時代背景の違う考え方や価値観を持つ祖父母や両親のもとで育った場合は、古い時代の社会状況や、生活環境や、人々の生き様や考え方などを事実として見聞きしながら大きくなっていきます。子供なりに世代間の違うふれあいの中で、戸惑い、迷い、悩み、考え、試行錯誤しながら、自分の価値観を培っていくことができ、それが社会精神や習慣などの鍛練の機会となり、自ずと社会人としての対応「スキル」も強化されて高くなっていくことは自明の理ではないでしょうか。
話は変わりますが、小学校の4、5年生の頃から子供の遊び方が少しずつ変わり始めます。それまでは一人で遊ぶことが多かった子供たちが段々と仲間も増え、やがて他の子供たちと集団で遊び、多様な物事に関わり始めます。そして、なるだけ親の目に留らないように秘密の遊び場所をつくり、自由な行動ができるような相互の関係をつくり、時には他の集団と喧嘩をしたりしながら、関わり方や友情を交わす仲間意識を学び、自己の心理状態の強化をしていくことになります。こうした時期を「ギャング・エイジ」と呼びます。「チームとか仲間」という意味で、保護者や学校の先生から脱皮しようとする冒険の時であり、「大人からの旅立ち・独り立ちのはじまり」の時代というところです。このような体験をすることで、その後のアイデンティティ(自己認識)を強化し「私」から「私たち」「われわれ」という連帯意識を強化、共有することができるようになるのです。
もうひとつ事例をお伝えしておきましょう。「好意の返報性」という言葉があります。これは自分を好きで可愛がってくれる人を好きになり、ふれあった回数程にその人に愛着が生まれる、という心の法則のようなものです。
アメリカ オハイオ州出身の心理学者「ハリー・ハーロー博士」の研究によれば、前提として「人間の母子間の関わり方を調べる目的」としてアカゲ猿で実験をしていますが、母ザルから引き離された子ザルはやがて生気を失い、一日中、檻の中に敷かれたマットで寝て過ごし、マットを取り上げると激しく抵抗したそうです。やはり、他に何もないときに「敷かれたマット」が唯一の愛着を覚えたモノだったのでしょう。これはほんの一例ですが、人間も幼児期に何に愛着を覚えるか、その初期段階が母親とのふれあいであり、人間関係の「社会的関係」のはじまりとなります。
なるだけ幼少期から多くの人間関係を持ち体験をしていくことが、のちのちの「社会的知性」に大きくかかわることは間違いないようです。

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