第182号 「脳の発達と社会的知性」について

最近では大脳生理学が進み、脳の持つ機能や発達過程、私たちの持つ知性や心と病気の関係などもどんどん解明されてきました。それぞれの個性の違いについて、私が開催している心理学セミナーの中でも性格形成過程についてお伝えしていますが、両親から引き継ぐ遺伝子構造による生まれついた気質の違いと、育った環境における体験が大きな要素を持つことは間違いありません。
脳の働きは、生命を守るために一番奥に脳幹の働きがあります。脳幹はこの世に生を受けた瞬間から、命を守るための逞しい自動的な働きを持っています。脳幹より自律神経が体中に張り巡らされ身体機能の恒常性を保っていきます。
しかし、脳幹そのものは外部からの刺激を受けてからしか反応しません。脳幹は与えられた能力で命を守るのが使命ですが、考えたり学んだりする能力をもっていないのです。その上部にある情緒的、本能的な記憶を司る大脳辺縁系の中にある古皮質や旧皮質の働きによって、身体を守るため、その時の情報(喜び、怒り、悲しみ、恐れ、不安、欲求など)に必要な精神活動を起こすための器官が連鎖反応を起こし、瞬時に多様なホルモンを発射します。視床下部には、体温調節や食べ物の消化を促進する働きがあり、内臓のさまざまな器官を自動的にコントロールし、体内を正常に活動させる仕組みがありますが、ストレス状態であれば、ホルモンの管理を担っている脳下垂体から怒りや悲しみなどに対応するためのアドレナリンや副腎から発射されるコルチゾールなど陰性ホルモンが出て、脳内はもとより内臓に悪影響を与え、体調を壊すことになりかねません。
その後の処理は大脳新皮質が担います。これまでに体験し学習し、入力した多様な記憶情報を想起し、感覚(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、体制感覚)情報や知覚情報をもとに思考し、想起した要素を組み立て、判断し、受容した現状の出来事を認識し、自分の身の周りに起こったいろんな情報に気づき、どのような状態かを理解し、主体的に考えを巡らせ、うまくいっていること・うまくいっていないことなどを選別し、評価し、意思決定し、小脳との連携を図りながら、手足の筋肉に運動情報を流し、言語活動を取り入れ、行動をコントロールして、然るべく解決するために必要なコミュニケーションを図りながら、うまく対応が出来るように調整し処理していくのです。
大脳生理学による知性には、長期記憶としての言語的知性・絵画的知性・空間的知性・論理数学的知性・音楽的知性・身体運動的知性(IQ)があり、多重知性と呼びます。それは感情的知性(EQ)に影響を受け、社会的知性(SQ)にも及び、パーソナリティとしての統合の知性にまで影響が出てきます。
以下次号

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