第187号 「社会的知性」と「行為の返報性」
私たちの持つ才能は、幼少期の人間関係によって開発されていきます。誕生してすぐに関係を持つのはもちろんお母さんですね。純真無垢、シミ一つない、真っ白な一枚の紙を想像してみてください。しかし、その紙にも和紙があり洋紙があります。また、それぞれのメーカーによっても、価格によっても紙の質が違います。そのように、私たちも人間としては同じですが、個体は先天的に違います。また、同じ紙でも、インクを使用してペンで書く文字と、墨を使用して筆で書く場合の文字では、イメージが変わります。更に書く人が違っていれば、またイメージが変わります。正に、人間の記憶したイメージも十人十色、百人百色と基本的な資質や個性に違いがあり、同じことでも、その対応方法や答えの出し方が変わってきます。つまり、「先天的な気質」と「後天的な体験」の違いが、その後の「心のモノサシ」となり、価値観の違いとなり、例えば同じ場所で同じ刺激の体験をしても、それまでの体験の違い(先行記憶)によって、受容の仕方、記憶されるイメージが変わるものです。長年に亘る体験の繰り返しは、大きな個性の違い、生き方の違い、関わり方の違いになり、日頃の「社会的知性の発揮」の違いがでることになります。
イギリスの作家・詩人であったジェームスアレンは、その著「原因と結果の法則」の中で「人間は思いの主人公・人格の製作者・環境と運命の設計者である」と簡潔な言葉で表し、人生はその人の「思いの通り」に結果をつくると伝えています。それが「人間関係の法則」だというのです。
では、どのように表現すれば「社会的知性」を発揮することができるのでしょうか。アメリカの作家で教師を務め、自己開発セミナーや対人スキルに関する各種研修の開発者、デール・カーネギーはベストセラー「人を動かす」の著書や「道は開ける」などの中で、「他者に対する行動を変えることにより、他者の行動を変えることが出来る」と記し、「自分を知り、自分に徹して、他者に好意を持てば、それは必ずそのように返ってくる。」これを「行為の返報性」と伝え、その習慣として ①常に笑顔を忘れない ②相手の名前を覚える ③話すより聞き手にまわる ④相手の関心に関心を示す ⑤純粋で誠実に接する これらが、人間の行為に対する「普遍の法則」である、と記しています。
心理学者アルフレッド・アドラーは、人間が幸せに生きていくには「人は弱く、短所があり、現実に限界を持つ。故に他者との結びつきを深め、相互で乗り越えることだ。」と述べ、また必要な条件は「①肯定的な自己受容(主体性の確立) ②前向きな他者への貢献(相互援助) ③他者への信頼(強い仲間意識)により、公平感、平等感をもち、対等に公正に関わり、相互に感謝を忘れず、無条件の「ありがとう」を伝えること。受け手が前向きに解釈できれば「勇気づけ」となり、その人の自律性が高まってくる。」と述べています。
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